大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)1558号 判決

以上認定の事実によれば、被控訴人横田は、リッカーミシン自由ケ丘支店長の通常の業務遂行の範囲にはいっていない事項について社長夫人に代る立場に擬せられていることを知りながらの東京大飯店での会食、受取りを証する書面の発行、金員支払を承諾する小切手の振出等あたかも同社の支店長が、同社の事務にたずさわるかの如き行動をしたため、控訴人は古橋の申向けを疑わず、真実リッカーミシンがその顧客への贈答品として大量にタッパーウェアを購入するものであると誤信するに至り、古橋のいうままに同人に購入資金名義で前記金員を交付して、結局前記未回収額相当の損害をこうむったものである。被控訴人横田のこれらの行動は、いやしくもリッカーミシンという大手企業の支店長として、社長夫人に代る立場でないのにそのまま会食に列し、またたとえ社長夫人からということで電話による依頼があったからとはいえ、そのことの真偽をたしかめることをせず、たやすく現実に授受していない商品について真実に反し商品の受領を内容とする文書に納品書なる題目をつけて、支店長の記名捺印をして渡し、また、古橋の頼みによる一時的な便法であるにせよ、個人の預金がほとんどないのにも拘らず金三、二〇〇万円という多額の個人小切手を振り出し渡すなど、およそ常識では理解することのできないものであって、それらは余りにも軽率というべく、通常人として用いるべき相当の注意を欠いたものといわねばならない。しかして被控訴人横田が相当の注意を用いれば、前認定の如き真実に反する古橋の言動から同人の意図は容易に知り得たはずであり、自己の前記のような行動が結局において古橋のいうことを裏付ける役目をすることになって控訴人を誤信させ、これに損害を蒙らせるに至るべきことはたやすく予見し得たはずであるのに右注意を怠って前記結果に寄与したのであるから、被控訴人横田には過失の責任があるものといわなければならない。これを要するに、被控訴人横田は古橋が控訴人を欺罔して金員を騙取するのを過失によって幇助し、これに加功したものであって、古橋とともに共同不法行為者たる地位に立つものである(民法七一九条二項)。よって被控訴人横田は他に特段の事情がない限り、右不法行為による損害賠償として、控訴人に対し、金五九一万九、六四〇円を支払うべき義務がある。

(浅沼 間中 園部逸)

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